2026/08/21 14:44

珈琲のおいしさを決めるものは、何でしょう。

豆の産地や品種、焙煎の深さ、挽き方、お湯の温度、そして淹れ方。
一杯の珈琲には、いくつもの要素が重なっています。

けれど、意外と忘れられがちなのが「水」です。

考えてみれば、淹れた珈琲のほとんどは水。
どれだけ良い豆を選び、丁寧に焙煎しても、その豆が持つ味や香りをカップの中へと引き出してくれるのは水です。

私たちが暮らす富山は、水をとても身近に感じられる土地です。

今回は、そんな「富山の水」と「珈琲の味」について、少しお話ししたいと思います。

山から届く、富山の水

富山で暮らしていると、日々の風景の中に山の存在を感じます。

晴れた日に見える立山連峰。
春にはまだ白い雪を残し、夏には濃い緑に包まれ、秋には色づき、冬になると再び深い雪に覆われます。

その山々に降った雨や雪は、川となって流れたり、大地へゆっくりと染み込んだりしながら、私たちの暮らす場所へとやってきます。

山から平野へ。
そして、その先には富山湾があります。

高い山と深い海が近く、そのあいだに人々の暮らしがある。

そんな富山の風景を眺めていると、普段何気なく使っている水も、この土地の自然がつくり出したものなのだと感じます。

朝、顔を洗うとき。
料理をするとき。
喉が渇いて、コップに水を注ぐとき。

そして、珈琲を淹れるとき。

あまりにも身近にあるからこそ、普段はその存在を意識することがありません。

でも珈琲にとって、水はとても大切な存在です。

水が変わると、珈琲の味も変わる

同じ珈琲豆を、同じレシピで淹れても、水が変わると味わいにも違いが生まれます。

水に含まれるミネラルなどの違いによって、珈琲の成分の抽出され方が変わるためです。

香りの立ち方。
酸味や甘みの感じ方。
苦みやコク。
口に含んだときのやわらかさ。
そして、飲み終えたあとの余韻。

普段は「豆の味」として感じているものの中にも、実は水が関わっています。

珈琲を淹れるというのは、豆の中に閉じ込められているさまざまな味や香りを、お湯によって引き出していくことでもあります。

つまり水は、ただ珈琲を薄めるためのものではなく、豆の個性を一杯の中へ運んでくれる存在なのです。

「同じ豆なのに、お店で飲んだときと家で淹れたときで、少し味が違う」

そんな経験がある方もいるかもしれません。

もちろん、器具や淹れ方、温度などさまざまな理由がありますが、「水の違い」も、そのひとつなのかもしれません。

富山で珈琲を淹れるということ

ケトルに水を入れ、お湯を沸かす。

珈琲豆を量り、ミルで挽く。

ドリッパーに粉を入れ、ゆっくりとお湯を注ぐ。

最初のお湯が触れた瞬間、珈琲の粉がふわっと膨らみ、香りが立ちのぼってくる。

少し待って、またゆっくりとお湯を注ぐ。

ぽたぽたと落ちていた珈琲が、やがて細い流れになり、カップの中へ溜まっていく。

毎日のように繰り返される、ごく普通の時間です。

けれど、そのケトルに入れた水がどこから来たのかを想像すると、一杯の見え方が少し変わります。

山に降った雪や雨が、大地を通り、川を流れ、長い時間を経て私たちのところへ届く。

その水でお湯を沸かし、珈琲を淹れている。

そう考えると、目の前の一杯と富山の自然が、どこかでつながっているように感じます。

遠い土地の豆と、富山の水

珈琲豆は、遠い国からやってきます。

アフリカ、中南米、アジア。

それぞれの土地で育った珈琲の実が収穫され、精製され、乾燥され、長い距離を旅して日本へ届きます。

そして私たちのもとで焙煎され、最後に富山の水と出会って、一杯の珈琲になる。

そう考えると、珈琲という飲み物は、とてもおもしろいものです。

豆が育った遠い土地の風土と、自分たちが暮らす富山の自然。

まったく違う場所から生まれたものが、一つのカップの中で出会います。

珈琲豆が持っている個性を大切にしながら、この土地の水で一杯に仕上げる。

それもまた、富山で珈琲を淹れる楽しさのひとつなのだと思います。

いつもの一杯を、少しだけ丁寧に

朝、まだ少し眠たいときに飲む珈琲。

仕事の合間、気持ちを切り替えたいときの珈琲。

誰かと話しながら飲む珈琲。

雨の日、窓の外を眺めながらゆっくり飲む珈琲。

珈琲は、特別な日のためだけの飲み物ではありません。

むしろ、何気ない毎日の中にあるからこそ、その一杯がおいしいと、少しだけ気持ちが豊かになるように思います。

おいしい珈琲を飲みたいと思ったとき、豆や器具だけではなく、たまには「水」にも目を向けてみる。

いつも使っている水で淹れてみる。
違う水で飲み比べてみる。

それだけでも、いつもの珈琲から新しい表情を見つけられるかもしれません。

山に降った雪や雨が水となり、その水でお湯を沸かし、遠い国から届いた珈琲豆に注ぐ。

豆の向こうには、珈琲農園の風景がある。
そして水の向こうには、富山の山や森がある。

その二つが一杯の中で出会う。

今日も富山の水で、お湯を沸かす。
豆を挽き、ゆっくりと注ぐ。

そして、出来上がった珈琲を一口。

何気ない毎日の中にある一杯だからこそ、大切に味わいたい。

富山の水と、珈琲。

この土地で淹れる一杯を、これからも丁寧に届けていきたいと思います。